■おくりはむ
平日夕方帰宅して早々、妹のハムスターが瀕死だと家の中がざわついていました 。ティッシュの上にハムスターが寝かされていました。
看取っていた妹が「ちょっとハム見ててよ」と私に任せてスマホをもってどこかへ行きました。触ると逆効果らしいのでただ見ていました。
かすかに息をしていただけのハムスターは一時、身体全体をつかってぐわ~んと大きな伸びをしました。そしてまた動かなくなりました。妹が戻ってきました。
私「今全身で伸びしたよ」
妹「それ死んだ合図だわ」
スマホで調べまくっていた妹が答えました。ハムスターをティッシュにくるんでいました。小屋も片づけていました。
夕食時に両親はここぞとばかりに妹に話しかけました。
母「あら~残念だったねぇ。元気だしなさ~い」
父「生き物には必ずそういう瞬間が来るからなぁ。ぐへへ」
■夜の取引
夜9時ごろ、父親が妹と私を呼びつけました。
「ジモシーで里親募集。これ結構近所よどうする?」スマホ画面を見せてきました。
『3歳 / トイプードル / メス犬』
犬は一昨年死んでそれきり飼っていませんでした。家族の中で、自らが飼い始めの主導者にならないようけん制し合い。でも誰かが言い出せば便乗したい。そんな風です。あるいは普通に里親の選考で外れていました。
女の子か。心づもりは全くありませんでしたが、どうせ当選しないだろう。
私は「いいんじゃない」と言いました。隣にいた妹も「いいんじゃない」と言いました。
さらに一時間後の10時、父親がまた妹と私を呼んでいました。「今から犬を貰い行く」と言う声が壁越しに聞こえました。
当選したのか。今夜10時だぞ。いったいどんな取引をしたんだ。非常識を怒ったりしないから、せめて巻き込まないでほしい。私は寝ている風を装って無視しました。結果、この取引には妹がついていきました。
その後私は本当に寝ました。夜中、伸びた爪をペチペチいわせながら虹色の服を着た犬が私の部屋に入ってきた気がしました。
■朝ごはん
翌朝、出勤前に父親と犬がリビングにいました。
私「朝ごはんあげた?」
👴🏻「すこし」
私「少しって何?あげたかあげてないかの二択でしょ」
👴🏻「チュール二つ」
私「それおやつやろもん」
👴🏻「餌、いつあげればいいかわからん」
私「前に犬飼ってたでしょ。朝晩よ」
👴🏻「今鶏肉ゆがきよる」
私「前の犬は普通の餌を食べなかったから苦肉の策で鶏肉混ぜてたんよ。最初からあげたら鶏肉しか食わん犬になるやないね」
👴🏻「そうね」
前に飼ってた犬のエサの未開封のものがあったのでそれをあげました。賞味期限が切れていましたが、買いに行く時間もなく、あげないよりマシと判断しました。
犬は完食しました。
■新入り
その日帰宅していよいよ犬とゆっくり関わりました。
高そうなロゴ柄の首輪をしていました。
私「これって何かしらブランド?」
妹「こーち(COACH)だよ」
譲り受けたのはご高齢の夫婦だそうです。健康上の理由から飼育を断念したそうです。
犬は、知らない人間だらけの知らない家に置かれたのに、吠えもせず、私たちを熱心に嗅ぎまわろうともしませんでした。初日からうちの居間のソファにあがっていたし、寝ていたし、廊下を闊歩するし、通りがかりの人間についてまわりました。
その様子を眺めながら、
私「これ人見知りもしない代わりにこれ以上親密度上がることも無い気がするわ」
妹「私もそう思うわ」
私たちは先住女性としてメス犬の陰口をいいました。

今週のお題「シーズン開幕」